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特殊な音の作り方

談話:助監督×工房の主人

主人「音の仕事は、セリフばかりじゃないな。」
助監「地道に部屋で音作ったりもするなあ、俺ら。」
主人「撮影現場では、余計な音はなるべく録らないって口酸っぱくして言ったけど、それはつまり、録らなかった音は後から録って追加しないといけないわけだ。」
助監「部屋の音録り、地味すぎるよな(笑)。」
主人「映画ってのは、基本的に地味なもんだ。華やかなイメージあるけどな。俺はお店で売ってる素材集は絶対に使わん、というポリシーがある。」
助監「音?」
主人「音も映像も。既成のものは使わない。」
助監「お、かっこいいねー。で、なんで?」
主人「買うと高いもん!」
助監「…」

主人「後から入れる音も、2種類ある。すぐ録れる音と、録れない音。」
助監「分かりやすく言うと、すぐ録れるのは携帯電話の音とか、車のエンジン音とかね。で、録れない音ってのは、今回で言うと銃声。」
主人「理解力がいいねー。」
助監「こういった音を録ってる時って、端から見ると変なやつらだなー何やってんだあいつら…って感じだろうな。」
主人「人数も少ないしね。下手すると俺一人でやってることもある。確かに恥ずかしい。でも仕方ない。」
助監「今回一人でやったのは何?」
主人「足音。草の上をいろんな速度で歩いたり、走ったり、あとコンクリートの上を走ったり砂利の上を歩いたり。しかも役者のキャラに合わせていろいろ録った。」
助監「どこで?」
主人「家の側の河原で。あれは恥ずかしかった!一人でうろうろうろうろ同じ場所を歩いたり走ったり。」
助監「うわっ、恥ずかしー!」
主人「うるせー!」
助監「二人でやったのは殴ったり叩いたりって音だったな。『ナット・ノーバディ』では暴力的なシーンも結構あったから。」
主人「これはシンプルにお互いの手のひらを殴り合って録った。」
助監「俺が殴るとお前の「…っ痛っ…」とか「…っったあー」とか声が入っちゃうから俺は殴られる側に回ったな。」
主人「お前ボクシングやってるから痛いんだよ、パンチが。」
助監「それでお前が殴る側になったんだけど、やっぱり痛かった(笑)。」
主人「必死にうめき声を出さないようにがんばったなー。」
助監「二人で殴りあいこして二人して耐えてる絵って、変なのー(笑)。」
主人「あ、ちなみに登場人物達の「うっ!」っていううめき声とか、録り損なった声は、全部俺の声を入れてあるのでよろしく(笑)。」
助監「バレなきゃいいよ(笑)。」

主人「用意するのが無理なものは、なんとかして作った。今回で言えば銃の音。」
助監「映画の銃声とか録音していろいろ分析したなー。」
主人「いろいろ試すんだけど、どうもそれっぽくない。結局、金属をたたくカンッって音と、ベルトで皮のイスをバチーンとたたく音、それからビニール袋をバンッってつぶす音を合成した。」
助監「他にもいろいろやったけど、一応秘密にしとこう。音の作り方にも著作権てあるのかな。」
主人「どうやって作るか、を考えるのも楽しいしな。」
助監「ちゃんと本物の音を録ってるんだけど、映像に当てはめるとそれっぽくない、なんてこともあったな。」
主人「それなんだよ。銃声の作り方を調べてて、実物の音はもっと乾いた音がする、映画のは嘘だ、なんて記述も見つけた。」
助監「そう、実際は乾いた音らしいな。でも映画じゃあやっぱ、バアーン…って聞きたいよな。」
主人「俺らと同じ悩みを、プロも抱えてるんだ。」
助監「ん?」
主人「『ターミネーター2』で、後半、巨大なタンクローリーが横倒しになるシーンあるよなあ。 あれ、実際に巨大タンクローリーを倒したんだけど映像があんまりぱっとしなかったんで、ミニチュアを作って撮影したらしい。それと同じだ。」
助監「おいおい、スケール違い過ぎねーか??」

主人「まあそんな感じでダラダラ思い付くまましゃべってきたけど、そろそろ終わりにするか。」
助監「まあお疲れさん。」
主人「いやしかし、音の収録も奥が深いよなあ。俺らの会話は浅かったけど。」
助監「またいつか、もっと技術力上げて、機材充実させてから講座第二弾やろーぜ。」
主人「やる気になってきたな。」
助監「ところでその録音機、ちゃんと動いてんだろうなあ。」
主人「あ、これ?大丈夫大丈夫、ちゃんと撮れてるよ。」
助監「録れてなかった、とか後で大騒ぎすんなよ。」
主人「大丈夫大丈夫。」
助監「録音に関してまずはそののん気さから直さないとな。」
主人「お!いいオチがついた。それもらおう。」


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