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室内でセリフを撮る

談話:助監督×工房の主人

室内でセリフを撮る
主人「室内の撮影って俺、好きなんだよなあ。とにかく外のロケと比べて楽なんだ。」
助監「待ってる時も床に座ってればいいし。」
主人「靴も脱いでいいし。」
助監「通行人も来ないし。」
主人「天気も変わらないし。」
助監「寝れるし。」
主人「君はもう来なくてもいい。」
助監「冗談だよぉ!」
主人「とにかく時間の制約がない、ってだけでものすごく撮影がやりやすくなる。」
助監「ロケ地はスタッフの家だったり、会議室借りてたりするな。」
主人「どちらも堂々と撮影できる。いつも辺りをうかがいながら、って感じだからなあ。」
助監「俺らがご用達の例の施設はいくらくらいなんだ?」
主人「3000〜5000円で、50〜80人用の結構な部屋が借りられる。いつも予約がいっぱいなのを除けば文句はない。」
助監「そんな安いのか。」
主人「あ、一点だけ注意点があった。施設によっては撮影などは禁止されてる。」
助監「え…、俺ら思いっきり撮影してなかったっけ?」
主人「それにはいい方法がある。借りる時に、『舞台の練習をします』って言っておくんだ。」
助監「なるほど。で、係の人が来たら、」
主人「練習風景を撮影して、みんなで反省会をするんです、と答える。」
助監「さすが舞台出身者!」

主人「音に関して言うと、問題は雑音の有無だな。場所によっては防音設備がなってないところもある。てゆうか、設備があるところは少ない。」
助監「値段と比例してる気もするな。」
主人「そうだね。区に一つはあるような数百円で借りれる会議室はきついね。隣で囲碁将棋やってるおじいさんたちの会話も聞こえてくるし。」
助監「窓が薄くて、外の車の音がまるまる聞こえたこともあったなあ。室内でも関係ないじゃん!って感じ。」
主人「うちらによく主題歌を提供してくれてるnavy&ivoryは昔、今みたいにスタジオばかり使えなくて部屋で録音してたそうだ。」
助監「へー。」
主人「部屋の窓という窓に毛布をガムテで貼付けて歌を録音したそうだ。」
助監「MD聞いたけど、ちゃんと録れてたなあ。」
主人「室内で音を撮るのは、別に室内シーンばかりとは限らない。」
助監「音の再録でしょ。」
主人「当たり!実際にとった声があまりうまく聞き取れなかった時、声だけを別の場所で録音する。」
助監「よくやるよな。」
主人「ほんとはよくやるようじゃいけないけどな。これ、ほんとやらないほうがいい。」
助監「声だけだけど、いつもカメラを用意してるよな。」
主人「ああ、映像を撮った時とまったく同じ設定で同じカメラを使って録音する。」
助監「ほんとは同じ場所まで行って録音できればいいんだけどな。」
主人「お金かかっても、ちゃんと防音設備のついた部屋で録音したい。安い会議室とかだと、声が響いて響いて使い物にならない。」
助監「それでも失敗談があったな。」
主人「つぶやき声のことか?あれはまいった。室内でまったく雑音がないのに失敗した例だ。」
助監「雑音がないからこそ起きてしまった失敗だな。」
主人「登場人物が死にかけてて、息絶え絶えでセリフを言うシーンだった。外で録音したから、そのつぶやくようなセリフがよく聞き取れない。それで再録、となった。」
助監「しかし会議室の無音状態で、つぶやき声を撮ったのに、今度はさらに小さな声で録音されてしまった。」
主人「無音だったから、そんな小さな声でも聞き取れてしまったんだな。あとで編集で埋め込んでみたけど、どんなにボリュームを大きくしても使えなかった。あれは失敗した。」
助監「だから俺『これで大丈夫か?』って確認したのに…。」
主人「え?そんなこと言ったっけ?」
助監「先生ー!ここに無音状態でも室内状態でも聞こえない人がいまーす!!」


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