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水無月朋子のお字書き講座
お字書き講座3 『シナリオ用語と使い方』

 と、いうわけでお字書き講座の第3回でございます。
やっと本題です。待たせすぎですね。はい。ではさっそく巻いて行きましょう。

まず、脚本を書くにあたっては「ちょっと他ではあんまり聞かないよ!?」という用語がいくつか出てきます。
そこで、シナリオ作成の一般的な順を追いながら、その用語を簡単に説明したいと思います。

テーマとジャンルを決める
 テーマとは話の主軸となるもので、つまりは「自分は何を伝えたいのか」という話の中心になる部分です。ドラマなのか、ドキュメンタリーなのか、あるいはラブストーリーなのか、サスペンスなのか…というような大まかなジャンルが頭に浮かんだら、次にしっかりとしたテーマを決めます。
例えば「○○ががんばって××する話」「○○が謎を解いて××する話」など、「がんばって××」「謎を解いて××」の部分に書き手の個性・カタルシス(訴えたいこと)が出ることになります。『テーマ』についてはまた別の回にて触れてみたいと思います。

キャラクターを決める
 いわずと知れた登場人物のこと。作品は展開や構成など、話の進行を考えることももちろんですが、魅力的なキャラクターがいないと話になりません。作品ならではのちょっと変わったキャラを出すも良し、リアリティ重視で「いるいる」というキャラを立てるも良し、書き手の個性を生かしたキャラの創生主となりましょう。一点、私自身が気をつけていることは「どんなに小さな役でもセリフがある限り名前を付ける」ということ。名前を考えることにより、そのキャラについて考えざるを得なくなる=キャラの個性が生まれるきっかけともなるからです。

プロットを立てる。
 プロットとは、本稿になる前の企画書のこと。全体の流れを考えながら、メモ書き程度で良いので「誰がどうする」「ここでどうなる」というように箇条書きにして行きます。「え?そんなのいらないんじゃん?」と思うかもしれませんが、頭の中にあるアイデアを書き出すことにより、大まかな流れや構成を客観的に見ることができ、さらに、書き出して行くうちに思い浮かんだ新たなアイデア、ディティール、セリフなどもどんどん書き込んで行くことで、矛盾点・重複する箇所・判りづらい箇所などを全体的に把握することができます。プロットとは本稿に取りかかる前の設計図のようなもので、書き手の中にはこのプロットの状態でいくつもの作品をストックしている人も多いようです。

箱(ハコ)を作る
 ハコとは、メモ書き程度だったプロットをさらに詳しくシーン分けして行ったものです。カルフのワークショップのために10分ものとして書いた作品『わたしをつむぐもの』を例に取ってみると、テーマは『缶』『歌を唄う女の子』『ループ』でした。(本作品の全シナリオについては『こちら』に掲載してあります)

必然的に主人公は歌を唄っている女の子となったので、缶を彼女の心情を表すアイテム、ループを構成として扱うことにしました。
プロットの段階で冒頭のシーンを『主人公葵(あおい)が川原で過去を思い出し、先輩渉(わたる)に電話をかける』と書いたとします。ハコ書きとは、それをさらに細かく必要な(ポイントとなる)セリフを書き込んでシーン分けしていったものです。例えば、

葵、川原に座っている。過去を思い出す。
プロデューサー榊との出会い(回想)と会話。榊「×××」=葵の迷い。(回想戻って)葵、川原に座っている。ポケットから携帯を出してかける。葵「×××」=問題提起


この作業により、大体のシーン数を把握するとともに、映像作品としての書き手のイメージ、ポイントとなるセリフを具体的に思い浮かべながら、シナリオの形に近づけて行きます。

 プロの脚本家となる前にはプロットライターという職種が存在しますが、プロットライターの中には、プロットの形で企画書を要求される場合と、ハコの形まで掘り下げた形で提出させられる場合があり、そういった意味でもハコ書きはシナリオにとって重要な役割を果たすものと言えます。

原稿を書く
 ここまで来たらあとは原稿用紙(あるいはパソコン)に向かうのみ!となります。
ハコ書きまで終わっていれば、自分の作品の流れや、シーンのポイントをほぼ把握できているはずですから、あとは完成に向けてひたすらガシガシと書くべし!ということになります。

…というわけで、次の回では「実際に原稿を書く」ことについて進めて行きたいと思います。
何卒よろしゅうお付き合いのほどを!

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