個人で映画を作る人というのは、たいてい特撮映画が好きなんじゃないでしょうか。
かくいう僕もそうでした。
映画を作り始めてたしか3本目くらいだったと思いますが、なんとかすごい特撮映画は撮れないものだろうかと頭をひねり、思い付いたのが、自分の家が燃えてしまうというストーリー。
当時(今もですが)、アパート住まいだった僕は、自分のアパートを燃やしてしまうべく、アパートのミニチュアを作ることにしたんです。
リアルなミニチュアを作って燃やせばすごいんじゃないだろうか。
あまりはっきり写すと、作り物だってばれるから、少し夕暮れの設定にしたらどうか。
そんなことを考えながら、アパートのミニチュアの制作に取りかかりました。
自分でも、かなりの大掛かりな制作になるのが分かっていたんでしょうか。
制作の過程を、ちょっとづつカメラにおさめていました。
だからこうやって今、そこから切り出した写真を掲載することができるんです。
せっかくなので、その過程を追ってみます。
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まずは設計図。
特に勉強したわけではありませんが、工作を続けてきたので、なんとなく図面は描けました。 |
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図面を元に素材を切り出し、段ボールの上に組み立てていきます。
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基本は、撮影する面だけ丁寧に作る、です。 |
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この通り、撮影しない裏面はかなり適当です。 |
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組み立てが終わったら色を付けていきます。
同時に、柱を竹ぐしで作っていきます。 |
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ドアや窓の飾りもつけていきます。
そろそろリアルになってきました。 |
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思い通りのモノができてくると、なんだか作業は止まらなくなります。 |
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必要ないと思いつつ、郵便受けまで付けちゃいました。
お隣の家のものまで再現です。 |
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階段を付けて、家の横の電柱も作る。だんだん完成に近付いてきました。 |
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ほぼ完成です。
細かい色具合を直していきます。 |
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完成しました!
ここまで約2ヶ月かかりました。 |
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階段や、家の前の覆いまで再現しました。
ここで、ポストを作っても意味がなかったことに気付きました。 |
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陰影がリアルさを際立たせます。 |
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電柱もいい質感を出しています。 |
こうして、家のミニチュア模型が完成しました。
僕ははやる気持ちを抑えて、家が燃えるシーンの準備をしました。
家の中で火を使うのは危ないな。
でも外で火を使ってたらもっと目立って危ないな。
よし、ベランダでやろう。
外が薄暗くなるのを待って、カメラをセットし、いよいよ点火です。
しかし、火を付けたとたん、僕は慌てて火を消しました。
ミニチュアの家の中が空洞だったため、一気にすべてのドアから火が見えたんです。
ちっともリアルじゃない。
僕は自分の部屋の部分を残し、後の窓は塞いでしまいました。
でも、紙でできているため、屋根の方は燃えています。
仕方ない。
よし、点火!
家は勢いよく燃えていきます。
ここで、あ、と思いました。
火が大きすぎるんです。
家に対して、あまりにも不自然なんです。
今でこそ、水と火は小さくできないから難しい、というのは知識として知ってますが、当時はやってみないと分からなかったんですね。
もうすべてが遅く、家は一気に燃えていきます。
半分くらい燃えたところで、水をかけて火を消しました。
瓦や電柱や壁が、同じように燃えていく。
こんな不自然なことはありません。
でも、仕方ありません。
いよいよ撮影した映像を見る瞬間です。
どきどき‥
ほとんど、何か、分からない。
しばらく立ち直れなかったのを、よおく覚えています。
つくづく、小道具とは哀しいものだと思うのです。
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