超初心者のための映画制作講座

海の向こうで映画を作る!

鈴木英之 8 Moment Enterprise

8:HUNTING FOR A JOB Part2. 仕事探し その2



次の日、僕はまたイタリアンレストランの前にいた。

一番優しそうなスタッフに目星を付け、入り口に近づいて来た時、話しかけようと待っていた。

20分が過ぎた頃、そのタイミングが訪れた。
僕は、そのスタッフめがけて、ひたすら歩き始めた。
その時の僕は、どんな顔をしていたのだろう。
今振り返るとストーカーのように思える。

“ Hello, my name is Hide. Can I have a job? “

スタッフは、僕の問いに何か答えてくれたが、早すぎる英語で意味がわからなかった。
僕は、” YES YES “ と笑顔で頷き、分かっているふりをしたが、
そのスタッフの表情から “ NO “ だと言う事を読み取れた。

僕はその場を去った。
その後、何件かお店を回ったが、仕事にはありつけなかった。


新聞に記載されている求人情報にも目を通し、電話をした事がある。

オーストラリアの求人情報は、あまり詳しく書いていないというか適当である。
会社名や仕事場所の記載がない場合もある。
でもこのアバウトさが好きである。

何件か電話をした後、ある事に気がついた。
僕はリスニングが極端に苦手だったため、
電話越しでは相手の内容が1割も理解できない。
この方法では仕事を見つけるのは、不可能だと悟ったのだ。

海の向こうで映画を作る


3日間で40件近くお店を回った。
時には、履歴書をもらってくれる人もいたが連絡が来る事はなかった。
僕は、初めて「言葉の壁」を感じた。

ただ次第に、相手が何を言っているのか分かってきた。
そして僕の ” Can I have a job? “ にも磨きがかかってきた。


あるパスタ屋を尋ねた時、今までと違った展開になった。
強烈な香水の匂いを漂わせるイタリアン風のボスらしき人が、君のスキルを見てもいいよと言ってくれた。
実践の面接である。

「基本的にやる事は一緒なのだ。後は、ボスが出す指示を集中して聞く事だ。」
自分を勇気づけた。

お昼のピークが終わり、ボスから着替えるように指示があった。
着替を終え店内の席で待つ僕は、なぜか恐怖感のようなものに襲われ、どんどん自信を奪われていく。


あの強烈な香水の匂いが近づいて来た。
僕は、ボスの方を見て恐る恐る質問をした。

“ Can I have a job? ”

ボスは、” Yes ” とゆっくり頷いた。

僕は、夢にまた一歩近づいたのだとうれしさを噛み締めた。



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