ここまで来たら、僕もですね、学習するわけですよ。
よし、もう君たちは相手にしない!
そう決めたわけなんですよね。
具体的にどうするかと言うと…
人が多いところで撮影しない。
いえ、決してシッポを巻いて退散したわけじゃないんです。
決して、負けを認めたわけじゃないんです。
ただ、ちょっとだけ郊外の町で撮影することにしただけなんです…(涙)
でねでね、僕はかねてから作りたかった題材に手を出したわけです。
スピルバーグの『激突!』ってありますよね。
主人公の車が、正体不明のタンクローリーに追い回されるって映画。
あのネタをですね、使ったわけですね。
オマージュをささげた、って言うんですか?
パロディーにした、って言うんですか?
決してパクったわけじゃないんですよ。
それで、主人公を追い掛けるのは、そう!!
警備員なわけです。
ざまーみろ!ってなわけです。
悔しいので、映画の中で悪者にしたんです。
ふふふ。
主人公が急いでるのに、警備員に泥棒と勘違いされてずっと追いかけられる、という「反・警備員」映画だったんです。
というわけで、ロケ地に警備員の服を着た役者がいる、という状況になりました。
警備員服は、まあ、とあるところからきちんと調達しました。
まあ例によって手作りな部分もありますけどね。
撮影は郊外のとある街。
駅から少し離れた、住宅地の静かな路地裏に、皆集まりました。
メンバーはシンプルです。
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●何も悪くない、ただ、自分がやりたいことをやっているだけの無害な主人公の青年。
●適役で憎くてどっか行っちまえ!!くそったれ!!っていう警備員の役の青年。
●にこやかですばらしいスタッフ
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ロケは炎天下の下、粛々と進んで行きます。
みなのチームワークもいい。
やっぱり新宿とかじゃなくて、郊外は警備員とかいなくていいなー、よかったなーって思いました。
ただ、今度は交通量が多い。
住宅地なので、車がよく通るんです。
ほら、また車が一台やってきました。
スタッフに声をかけて道を空けます。
すると、警備員役の役者が交通整理を始めました。
おいおい、本物じゃないのに‥
でも、なんと、車はそれに従い、うまくすり抜けて行きました。
皆大笑い。
警備員役の役者もニヤニヤしてます。
そうやって、ロケ中車が通りかかる度に、警備員役は本当に交通整理役を果たしたのです。
車が止まって助手席の窓が開き、道を聞かれるシーンまでありました。
そう、今回は何もかもが順調だったのです。
僕は少し怖くなりました。
油断するときっと何かが‥
そして。
やはり。
いたのです。
いえ、警備員ではありません。
警備員役が交通整理をして、道を案内して、その後すぐに撮影に戻って行く姿を、
物陰からジッと眺めていたおじいさんがいのたです。
撮影が週番に近付いたその時、
そのおじいさんは、つい、と近付いてきました。
そして、
警備員役に向かって一言。
「勝手なことをするんじゃない!!!!」
警備員役、うへ、って感じで首をすくめました。
なんだかその場にいずらくなった僕達は、そそくさと荷物をまとめました。
その近くにあった公園に移動しようということになったんです。
実はこの映画での「カルフ×警備員」まだ続きがあるのです‥‥
(つづく)
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