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こわいお兄さんがやってきた!

分かった分かった…
ここまでいろいろ立続けにあると、さすがの僕も反省するっつー話ですよ。
警備員がいそうなところじゃ撮影しないし、警察のごやっかいになりそうな紛らわしいこともやらない。
そう心に決めたわけです。

そんなある時。
知り合った女性監督と意気投合して、彼女の撮影の助監督をやることになったんです。
女監督の助監督。
ジョカンのジョカンかよ…なんてぶつくさ言いながら現場に行ってました。
で、彼女がまた僕以上に無謀な人で。

都内の大きな交差点でロケ、になったんです。
ものすごい人通りで、その中でエキストラ10人くらい使って撮影する。
僕と役者さんの一人で、先に行って場所を確保、撮影の準備をすることになりました。

で、僕らはまず、近くの交番に行ったんですね。
ほら、進歩でしょう!
でまあ、訳を話したわけです。すると…
「さっさとやって、さっさと帰って下さい」
とのこと。
プロならともかく、趣味の段階なので、いちいち相手にしてられない、早くいなくなってくれ、ということらしいのです。

おっしゃ!警察の御墨付きをいただいた!!

急に意気揚々としてきましたね。
もう、誰にも文句は言われる筋合いがない。
僕らはゆうゆうと撮影場所を確保。準備を始めました。

ちなみに、役者さんは露店商の役で、僕はそのお客という設定でした。
僕らは地面に布を敷き、用意していた小物などを並べ始めました。
と、その時…

「あんたら、どこの許可とってんだ…」

振り返ると、ドスのきいた面構えのお兄さんがじっと僕らを見下ろしています。
僕らはぴたり、と動作を止めました。
そして次の瞬間、二人して必死に状況説明です。

-これは映画の撮影なんです
-本当にものを売ろうとしてるんじゃないんです
-撮影隊がもうすぐ来るんです
-そしたら信じてもらえます
-ほんとなんです
-うそじゃないんです


どんなに説明しても、お兄さんはじっと視線をはずしません。
困った!
考えてみたら、さっき電話があって監督たちは少し遅れそうだって話じゃないか!!
万事窮ス!!!

しかし、やがてお兄さんも恐い顔を引っ込めて自分のお店の設営に取りかかり出しました。
信じてもらえたようです。
考えてみると、もし僕らがもぐりの露店商なら、その場で逃げ出すはず。
ところが僕らはじっとその場を動かない。
必死に身の潔白を訴えながら、動かない。

外は薄暗くなり、言葉もなく静かに待っている僕らのところに、監督率いる撮影隊がやってきました。
僕は監督に駆け寄り、事情を説明。
監督とカメラマンがお兄さんに撮影の旨を伝え、晴れて僕らは無実になりました。
しかし、機材がたくさんあっていかにも撮影撮影してて、よかった〜!

昼間に撮影予定だったものの、予定通り(?)予定がずれ込み、夜になってしまいました。
こちらで用意していた発電機と照明だと、ちょっと心もとない…

すると、お兄さんが
「光、貸してやるよ」
と、自分のお店の照明をくい、とこっちに向けてくれるではないですか。
あっちはもう、バンバンに明るい照明をお持ちですから、それですっかり撮影現場は明るくなったんです。

無事撮影は終了。
僕らはみんなでお兄さんのお店で食べ物を買ってお礼を言って帰宅したのでした。

それにしても、警備員→警察→お兄さん、といつになったら誰にも何も言われずに撮影ができるんでしょうか…



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