ホーム映画制作講座組織の作り方カルフの作り方 > カルフの作り方5

STEP05:男女が集まれば恋も生まれる

中村編集長の小さな事務所に足しげく通うようになり、そこで小さなパーティーを担当することになった。

それまである女性が担当していたのだが、出産のために来れなくなり、俺が引き継いだのだ。俺がリーダー兼司会で、ボランティアの女性が1名。

以前来てくれた参加者の名簿を作り、丁寧にフォローし次回の連絡をする。
開催日は初めての参加者を駅まで迎えに行ったり、必要な小物を手際良く準備する手順を整えた。

司会の俺は場を盛り上げなければならない。しかし、その頃の俺は少々性格が堅すぎた。
そこで、とにかくアットホームなものにしようと決めた。

参加者の年齢層は偏っていた。20代の女性か、定年後の男性たち。そして御意見番的存在の70歳のW氏。
このメンバーでは共通の話題で楽しく盛り上がる、というのは難しい。
考えた結果、活発な女性陣からやってきたこと、やってみたいことなどを引き出し、それに対して経験豊かな男性陣からアドバイスをもらう、という流れを作った。気をつけたのは、「それは無理だよ」「できないよ」という類いの否定的な意見を徹底的に排除すること。

ただ逆に、これはこれで若い男性からは人気がなく、参加してくれた男性も2度顔を出すことはなかった。
グループを盛り上げるにはバランスが必要である。体験的にそう思った。
毎回毎回、会が終わった後は精神的にヘトヘトだった。

「ね、オリちゃんは誰か好きな人いないの?」  

 編集長が言う。
「いっつもいい人で終わっちゃうんですよ。」  

 いろんな人が出入りする場所に俺がボランティアでせっせと足を運んでいたのは、もちろんそこが楽しかったからだが、同時に女の子と知り合えたら・・・というやましい気持ちがあることも否定できなかった。
何だか純粋でないみたいで嫌だったが、それはそれで自然な気持ちなのだ、と自分を納得させた。

実際、ボランティアの中にもそういった話はいくつかあったし、俺自身もぽわーっとなる人ができた。
俺の困ったところは、人を好きになると他のことが目に入りにくくなること。司会をする上で、これはまずかった。
他の人がいるのに、均等に声をかけるのではなく、好きな人がどこにいて誰と話してるのかが気になって気になって仕方ない。
周りの人には、多分、バレバレだったと思う。

編集長は、ボランティアのそういうことに一切口を挟まなかった。
もめ事さえ起きなければ、あとは個人に任せるというスタイル。これは、今の俺も踏襲している。
むしろ、恋が実れば活動も活発になるしお互いにハッピーだと思う。
編集長にいつの日かちゃんとした自分の彼女を紹介したい、と俺は思った。

しばらく関わっていた演劇集団は、公演を終えた段階で解散していた。

メンバーは皆、一度火がついた熱気を持て余し、あちこちでいろんな活動企画が自主的に上がっていた。
企画はほとんどすべて舞台に絡んだものだったが、一人、映画を作ろーぜ、というやつが現れた。

あああああ、と思った。

俺はそれまで、映画を作ることを、忘れていたのだ。
言い出しっぺの彼が呼びかけ、6、7名の劇団の仲間が池袋に集まった。男女半々である。

彼はあんな映画作りたい、こんな映画作りたい、と理想を一人で話した。しかし、それからどうしていいか分からないようだった。
集まった面々も、熱意はあるものの、じゃあどうするんだ、という雰囲気が流れる。

俺は提案した。次回はいついつ会おう。それまでに各自作りたい映画の企画を持ち寄る。
作れるかどうかなんて考えなくてもいい。好きな短篇小説でもいいし、漫画でもいい。とにかく面白そうなストーリーを集めよう!

言い出しっぺの彼に悪いと思いながら、俺はその場を仕切ってしまっていた。


>>次
STEP06:楽しんでるのは俺一人!?
© Since 2001 映画工房カルフのように All Rights Reserved.