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STEP01:すべての答えは本屋にアリ

あーあ、またやり直しか…。
東京郊外のT駅に降りたって初めて、また戻ってきたんだな、と実感した。
22歳の春だった。

俺は18歳で大学進学のために広島から上京し、19から20歳にかけて一人で映画を作り続けた。
この間、たった2本だけ、一人じゃない映画制作を行っている。
1本は、高校時代の友人(現・助監督)と。もう1本は、大学の友人と。

どちらも映画を作るために呼んだのではなく、たまたま俺の部屋に泊まりに来た時に、せっかくだからと手伝ってもらっただけである。

全部で8作品くらい作っただろうか。やがて頭に思い描く作品を作る機材・技術がないことにいらだち始め、作るのを止めてしまった。同時に、夢中になるものを失った俺は、精神のバランスも崩したらしい。
たった数人しかいなかった大学の友人にすら何も言わず、俺はアパートを引き払って大学を休学し、姿を消した。

ただただ自分に自信がなく、誰と会っても皆優秀に見えるのが辛かったのかもしれない。

1年後、しかし俺は復学する。
絶対にここには戻ってこないと決めた街に、俺は再び住むことになった。

友人は皆進級し、俺は授業を一緒に受ける知り合いすらいなかった。誰とも口をきかず、一人で家にこもる・・・。
以前と同じような生活が始まろうとしていた。

そうはいくか、と思った。

学外に友達を見つけるしかない。
俺はこの休学していた1年間、俺のことを誰も知らない場所に行き、老若男女問わずものすごい数の人と知り合い、語り合った。
対人恐怖症を克服しつつあったと思う。

何か突破口を見つけたい時、俺は本屋さんに行く。

巨大店でも、個人書店でもなく、デパートのワンフロアを使ってるような中規模の本屋さんに行く。巨大な書店には情報が溢れ過ぎ、見つけたいものが目に入りにくい。また個人書店は本が少なすぎる。

何かないかなー。そんな気分で情報を探すのに、中規模の書店は最適なのだ。
1年間休学する時も、その間何をすればいいのか教えてくれた書店に、俺は出向いた。

まず心を無にして、一番端っこから入店。じっくりすべての棚を順に見ていく。
出産コーナーだろうが女子高生向けファッションコーナーだろうが、医学書のコーナーだろうがすべて目を通す。

目に入ったのは、『国際交流パーティー』の文字。ある語学系の雑誌の裏表紙に、その広告は出ていた。
俺は迷わずその雑誌をレジに持っていった。

毎週木曜日の夜7時から、そのパーティーは開かれていた。場所は新宿3丁目のとあるマンションの一室。
俺は几帳面に開始10分前に現地に行った。

ドアをノックしたが返事がない。恐る恐るドアを開けると、そこは6畳程度の何もない空間だった。中には30代と見える男性が2人だけいて、こっちを見た。部屋はシンとしている。
うわ、変なところに来ちゃった…。
俺は慌てたが、彼らと目が合ってしまったので仕方なく部屋に入る。2人はすぐに視線を落とし、立ったまま雑誌を読み始めた。

俺はぼーっと突っ立ってるのも気まずいので、彼らの真似をしてラックにあるその語学系の雑誌を手にした。
雑誌を広げたものの、文字が目に入らない。

俺は、どうやってここから逃げ出すかだけ、考えていた。


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