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水無月朋子のお字書き講座

お字書き講座4 『シーンの作り方』

 と、いうわけでお字書き講座の第4回でございます。
前回、プロット・ハコ書き、という一見めんどうな作業を経たことによって、設計図と完成予想図はできていると思われます。ですから今回は原稿を書き始めるにあたって、まず最初に一般的な書式の説明から始めたいと思います。

  元々シナリオは、現場の人間が読みやすいようにという理由からシナリオ用の原稿用紙を使って書かれていました。これは普通、作文などで使われている原稿用紙の半分のサイズ『20文字×10行(200文字)』を一枚としています。この形式は一般公募などで使われることもありますが、最近はどちらかというと普通の原稿用紙換算『20文字×20行(400文字)』が一般的で、今回はこれにならって『400字詰め原稿』を一枚とします。

  さて、実際に書き始めるにあたって「何分ものを書くか」ということになりますが、これは単純明快で、ト書きの量、セリフの量に関わらず、『原稿用紙1枚(400字)=約1分』の計算になります。

  映像作品はシーンのつながりで構成されています。そのシーンを作るものが以下の3点で、その役割は次の通りとなります。

  1. 柱  : 場所・時間(と、その状態)を説明する。
  2. ト書き: シーン内に登場する人物、物などの動きを説明する。
  3. セリフ: 人物が話す言葉。

  前回、ハコ書きの例として出したシーンを「柱・ト書き・セリフ」で構成したシーンにすると下のようになります。

 1)川原の土手・日中 空の映像。
   葵の歌声が被って流れる。
    ガチャリとウォークマンを切る音。
    葵の声、止まって。葵が寝転んで名刺を 眺めている。
    側にウォークマンとスコア。
  「あーあ…(とため息)」

 2)原の土手・夕方(回想) 川原で葵が歌っている。
    土手の上に榊。
   「いい声だね。いつもここで歌ってるの?」
   
葵、驚いて振り向く。
    × × ×
    榊の手、名刺を手渡す。
    『プロデューサ ー』の文字。
   榊の声「その曲、うちに預けてみてくれないかな」
   葵、受け取るが戸惑った表情。

 3)原の土手・日中(回想戻って・オフ)
    葵、ガバッと起き上がり携帯を出す。
    携帯画面『ワタル』。
    葵、電話をかける。
    携帯を耳に当てた葵、思案顔。

 というような形になります。この3つのシーンでポイントとなっているのは、

  1. 名刺という小道具で導入部のきっかけを作っていること。
  2. 「榊」というキャラクターの肩書きを紙面の文字で見せていること。
  3. それがきっかけで葵が迷い→別のワタルという相手に電話をかけていること、です。

 主人公である葵は、自分の感情をセリフでは何も説明していませんが、名刺(とその肩書き)を見て、別の誰かに電話をしようとします。この「別の誰か」についても説明はしていませんが、葵が何らかのトラブル(または電話をしなくてはいけない状態)であることを感じさせます。このようにシナリオは「映像作品の土台」である以上、「映像で見せられる部分は説明しない」ことが大前提となります。また、それを効果的に見せる手法として、シーンにはいくつかの種類がありますので、その基本的なものを書き出してみます。

例1.一般的なシーン: 「誰がどうした」かをト書きで書き、セリフを話させるもの(↑のシーン1)

例2.俯瞰(ふかん):セリフはなく、場所のみを判らせたい時に使います。柱の下に「俯瞰」と書く、あるいは柱 +ト書きだけで、セリフがないのが一般的です。

例3.回想:登場人物が過去を思い出すような時に使う。柱の下に回想と書く(↑のシーン2)

例4.オフ:柱の下に「オフ」と書き、音声のないシーンであることを示す(↑のシーン3)

例5.カットバック:(電話のシーンのやりとりなどで、柱の下に「カットバック」と書くことにより場面が相互に切り替 わることを表す。

例6.ナレーション:時代劇などで『元禄何年、○○は動乱の世を迎え…』など、登場人物の声で状況を説 明する時に使う。現代劇ではあまり使われない手法。登場人物の名前の下に「N」と書くとナレーショ ンの意味となる。

  このようなシーンを使い分け、またシーンにつながりを持たせながらお話を展開させます。 というわけで、次回はシーンのつながり=全体の流れ=構成について進めて行きたいと思います。それではまた来週〜!(…って週替りなのか!?)

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