撮影が始まった。
どのように撮影が行われるか気になった僕は、とにかく監督、カメラマン、ミュージシャンの付近をうろうろした。
そんな僕が邪魔だったのか買い物をお願いされた。
ADから渡されたメモには、” Air Spray, Panadol ,,, “ と5項目ぐらい書いてあった。
「エアースプレー、パナドル?」
念のために持ってきた電子辞書を取り出し、検索をしてみるが辞書に載っていない。
戸惑っていた僕を見たADは、何か僕に尋ね、そして何を言っているのかわからない僕は、さらに戸惑った。
結局、僕は買い物すらできず、撮影が終わった所を掃除していた。
ただ幸い同じように掃除をしていた別の ADのショーンという青年と仲良くなる事ができた。
1対1だったのと、僕のペースで会話をしてくれたおかげで、お互いに理解する事ができた。
ショーンは、日本の事がとても好きだった。
すごくびっくりしたのが、力士のまげの事についての彼の見解だ。
彼は、力士のまげをアートだといい、熱くその美について語ってくれた。
彼の話を聞いている時、僕はどこか切なかった。
シドニーでは、沢山の国々の人達と出会った。
僕の印象では、そのほとんどの人達が、自国を愛し誇りに思い、そして自国の文化、伝統、歴史の事を良く知っている。
僕を含めて、日本の文化や伝統を誇りに思い、説明できる若い世代の日本人は、少ないと思う。
海外に来て、より日本の事を知りたいと思った。