映画制作講座映画の企画・準備ホラー講座〜恐怖の書き方

CHAPTER3

○ 居間(朝)
ザーーー、ザザザーーーー。
「ニュースをお伝えします。今朝、午前4時20分頃から現在の時刻までに、東京都、神奈川県にて震度3の地震が5回観測されました。震源地はいずれも東京湾、震源の深さは約60Kmです。この地震による津波の影響はありませんが、大地震が来る前兆の可能性もあり・・・」
乱れるテレビの画像。
歪むニュースキャスターの顔。
赤い閃光が画面に一瞬走り、パチンッと唐突に切れるテレビ。

○ 外(朝)
窓から外を見ると、地震雲なる亀裂が晴天の空に走っている。
唐突に聞こえなくなる喧騒。

○ 庭(朝)
庭の片隅に作られた文鳥の墓。
アイスの棒に「ピーコの墓」の文字。

○ 居間(朝)
「お姉ちゃん!」
私のスカートの裾を掴んでくる妹。
「?」
連れて行かれた鳥かごの中には、死んだはずの文鳥の姿が・・・。


『天災と恐怖』
関東大震災が来るかもしれない。
都会に生きる私達にとって、これは恐怖以外の何物でもない。
特番で流される数々の番組
「もし、地下鉄に乗っているときに地震が起きたら」
「液状化現象」
「地盤沈下」
「家屋倒壊」
「火炎柱」

再現VTRは、私達に少しずつ恐怖を与えている。
そして、私達は愚かなことに、テレビやネットから与えられる過度な情報に少しずつ飼い慣らされている。
第三者的に捕らえていた私達がいきなり当事者になったら、私達はどうなるのだろう?
自然を前にして、私達はただ待つことしかできない。

と、今回はまじめに語りそうになったが、ホラー映画と自然災害の融合について今回は語ることにしよう。

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作品No.1
「黄泉返り」
熊本県の地震をバックグラウンドに描いた作品である。
この作品には、不思議なことに怖さよりも刹那さを感じるのは、私だけだろうか?

死んだ人間が帰ってくる。

ホラーに起こりえる怪奇現象。
これに説明をつけるのは、非常に難しい。
なぜ、蘇るの?
なぜ、死んだ人が帰ってくるの?

怪奇現象なのに、実に自然に人々がその現象を受け入れているのは何故なのか。
そこに、人間の力ではどうすることも出来ない自然の力が起因しているからだ。そう思わせることが出来れば成功である。

この作品では、その理由がすごく自然に解明されている。
地下に蓄積した地震エネルギーの影響という形で。
まぁ、地震エネルギーに人を蘇らすだけの力があるなんて話は聞いたことないけど。ここは作者の想像力ということで深追いはしないでおきましょう。

そして、人の気持ち。
「あの子に、もう一度会いたい!」
そう願って、わざわざ熊本まで遺骨を持って、行ってしまう人もいれば、長いこと「帰らぬ息子」の帰りを待っているお婆さんもいるという事実。

そして、死者の気持ち。
生きてる人を地震から守ろうとして、蘇ってきたんだって最後に分かるところが憎い。
多くは語らないけど。

うまいなあと思う。

って、次は作品の解説になってしまった。

地震学を研究していた私としては、実に興味深い作品だったわけで。

ホラーで泣かせる。私もこんな作品を書きたい。

と、次は抱負になってしまった。

まぁ、「ホラーは単に怖ければいいのよ」からは卒業しましょうってことです。それには、自然という偉大な力を借りてもよし。
ホラー作家を目指す人たち、ぜひ「黄泉返り」見ましょう。

と、次は映画紹介になってしまいました!


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