前回のつづきです。
警備員からは逃げたものの、おじいさんに一喝されてしまった僕らは、ある公園にやってきました。
もう高層ビルでもないし、うるさい人のいそうな住宅地でもない。
ここは、人々が集う公園。
ここは、皆が思い思いに好きなことをする公園。
もうね、誰からも邪魔されないのです。
名前は出しませんが、そこそこ有名な公園です。
人は多いですが、路上詩人だとか、フリマとか、バンドとか。
そう、同業者みたいなのがいっぱいいるんです。
これはもう、心強いじゃないですか。
そうなんです。最初っからこういうところに来ればよかったんです。
これまでのことは、もういい。
僕は気持ちを新たにしました。
この公園でやるのは、前回に引き続き、警備員に追いかけられる主人公が遭遇する人々の撮影です。
ただし、この映画、ドタバタ喜劇で、途中途中にとんでもない人々が登場します。
この公園で登場するのは、全身包帯男。
包帯男役は、スタッフにぐるぐるに包帯を巻かれて行きます。
なんかうれしそう。
僕らも大笑いしながら見てました。
こんなの、テレビのコントでくらいしかお目にかかれません。
包帯をぐるぐるにした後、ちょっとした出来心で赤い血のりをところどころにつけてみました。
うわー、痛そー!!
スタッフから笑い声が上がります。
そんなうららかな夏の日の午後。
僕は、人生のヨロコビを全身に感じていました。
通りかかる人々も若い人が多く、くすくすにやにや。
いやーなんて好意的な視線なんだ‥‥
撮影が進みます。
なんだかすっかり警備員対策を怠っているように思えるかもしれませんが、そんなことはありません。
何もしなくても自然と周りをチェックする癖が身体にしみついてしまったのです。
大丈夫。警備員はいません。
何カット撮影したでしょうか。
思うようなカットが撮れず、テイクを重ねていたその時でした。
ガサ、と音がして、自転車に乗った警官が突然現れたのです!!
そんなあ、自転車は反則だあ!!
警官は近付いてきて言いました。
「君たちかあ、大怪我をした人が歩いてる、って通報があったんだよ」
通報。
通報。
なんということだお母さん。
通報だってお父さん。
通報って‥‥‥
これじゃあ、いくら辺りに注意してもダメじゃん!!!
じわじわと、自分の周りが固められて行くのを感じます。
あれがだめ、これがだめ。
あっちもだめ、こっちもだめ。
いいだろう。
そっちがそういうつもりなあ、こっちにも考えがあるのだ。
逃げ回ってやる。
逃げ回って、撮影を続けてやる。
僕は心に誓ったのでした。
あ、ちなみにこの時は警察に(まったくもってその場しのぎの気持ちで)謝り、(一時)退散。
警官がいなくなってから戻ってきて撮影を済ませました。
もう!
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