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警備員に目を付けられる

 どうやら都会はどこでも好きな場所で撮影していいわけじゃない、ってことがだんだん分かってきたわけですよ。
都会は、って書いたけど、別に田舎で撮影した経験があるわけじゃないけどね。
田舎で撮影しても、警備員はどう考えてもいなさそう。
ただ、どこからともなく知った顔のおばさんが現れて、
「あら修ちゃん、帰ってきたんねー」
 と声をかけてきて、
「それ何?大けなカメラじゃねー。おばちゃん撮ってや。きれーに撮りんさいよー。」
 と話があらぬ方向に逸れていくだけかもしれない。
いやむしろ、警備員よりもやっかいかもしれない。

その日も僕は仲間と一緒に新宿にいたんですよ。
どうしてそういつもいつも新宿なのか、と言われても、他を知らないんだから仕方ないじゃないですか。
ひとつの町ですべての撮影を済ませてたんですよ、当時は。

でまあ、みんなで打ち合わせをして撮影を始めたものの、またやって来たんですよ、警備員が。
「許可とってるんですか?」
もうだんだん慣れっこになっちゃって。
「はいはいすいませんねー」みたいな感じで退散。

次の場所を見つけないといけないので、いったんそこでみんなに待っててもらって、僕一人でロケハンに出かけたんです。
そしたらものすごくいい場所を発見。大きな像があって、絵になる。
僕は走ってみんなのところに戻りました。時間ももったいないですしね。
で、みんなを連れて見つけたロケ地に着きました。

じっくり辺りを見渡しても、警備員の姿はありません。
もう、このチェックは怠れません。

さあ、撮影です。
これだけいつもいつも警備員に追い出されてると、その場でロケ地を探さないといけないし、その場でカット割を考えないといけないわけで。
実はこの頃鍛えられたのかもしれませんね。
そっか。
ありがとう!警備員さん!

…ってなるか!バカやろう!!

とにかく大急ぎで撮影方法などを立て直し、ぱっぱと指示を出したんです。時間がないですから。
実はここのシーン、僕が出演するカットでした。
この頃はまだ、バリバリ出演する側だったんですよね。今は引退しましたが。
衣装も、なるべく目立つような格好をしてました。
真っ赤なジャンパーに帽子をかぶって。
立ち位置を決めて、自分の胸より上の部分を撮影して…とカメラを持ったスタッフに呼びかけた途端、

「そこ!許可取ってますか!!」

え!警備員!?
声はすれども姿が見えぬ。
キョロキョロと見回すと…

 





今度は上かよ!!!

おめーら、神出鬼没すぎだっつーの!
もぐらたたきのもぐらかっつーの!

そうやってまたまた、退散の憂き目にあってしまったわけで。
しかしそっちが神出鬼没なら、こっちだって神出鬼没で相手してやる!
警備員に追い出されたら、次の一手は決まってるんですよ。
それは…

時間をおいて、やつがいなくなったところでまた舞い戻ってきて撮影をする。

これ。
これなんです。
まさに神出鬼没の極意。
ふふふふ。

さっきはみんなでぞろぞろたむろってたから目立っただけなんだよな。
今度は必要最低限でさっさと終わらせてやる。
どうせ警備員のやつ、こっちの顔なんて覚えてないに違いない。
こっちの体勢が違えば、人込みにまぎれちゃうしな。
ばーかばーか!
さっきお前が注意した人間と、また来た人間が同じだとは決して思うまい。
さっきのうちらと今度のうちらの共通点なんてなーんにもないんだよーだ!
何にも…

俺の衣装、さっきと一緒じゃなきゃいけねーじゃねーかあ!!


その後、警備員の行動範囲をチェックして、そのすきに撮影を終わらせました。

闘いは続いていく…


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