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梅津直人

やっぱり笑いが一番強い

やってみて分かったことですけどね、やっぱり笑いが一番強いかなって。
なんでかっていうと、役者という職業と、笑いという職業は違う。
笑いっていうのは、舞台出るでしょ、

笑い来なけりゃ負けなんですよ。

負けたら、其の後は仕事来ないし、帰りはほんと悲惨な思いをする。
もう、お客さんも来ない、握手して下さいなんてこない。
後輩にお疲れさん、って言っても無視。
役者さんってのは、舞台が失敗しても、お疲れさんでした、って言える。お客さんから拍手もらえる。
お笑いには、それが、ない。

だからボクシングみたいなところがあって、勝ち続けないと、売れて行かない。
その苦しさを、週1回くらいのペースとか2回くらいのペースで続けなきゃいけない。
勝った、負けた、勝った、負けた… お客さんがどう思おうが、今日は俺なりにやった、とか自己満足ができない。

不思議なもんでこれが。 笑いが大きかったからよかった、とかじゃない。
例えばジャッキーチェンとかすごい笑えると思うんですよ。単純なコメディーとか。
それと、シチュエーション的におもしろい、
お腹をくすぐる面白さってあるじゃないですか。 面白いけど声に出せない面白さ。
で、どっちが面白いかっていったら、声に出せない方。

うちに帰って思い出すのは、声に出せなかった面白さ。

だからコメディーって怖いな、って思いますね。
大爆笑とったグループは、絶対面白いとは限らない。

お笑いやるじゃないですか、すごい余計なことをやって笑いをとった時があったんですよね。
ネタからはずれた事、アドリブが得意ってのはいいんだけど、ネタからはずれ「すぎて」もダメなんだよね。
確実に笑いを取って自分のネタの方に持って行くためにはずれるのは仕方ない。
でも、自分から外れて行く場合もあるわけですよ。それは大きな違いで。

ネタからはずれちゃって笑いを取ってしまった。
ネタがあるのに。ネタって基本なのに。 お客さんと勝手にしゃべっちゃって笑いを取っちゃった、とか。
それは、会場の雰囲気的には大受けなんだけど、終わったら相方から一方的に殴られます。
「さっきなんであんなことしたんだ。お前もっとネタを大切にしろ」って。

俺がこうやって語ってる事自体、相方が見たら笑うと思うんですけどね、そういうのも時と場合で微妙なバランスで成り立ってるんですよ。そういうなかでやってきたんで、笑いはすごいかっこいいし、面白いし、自虐的だし。
笑いの中にもいろんな種類がある。
人間的だったり。 これはどこの笑いかな、って。
この間、『カンフーアクション』見てきたんですけども、むちゃくちゃでしょ、うんこ垂れてるとこ映したり。
今度、監督たちと『5センチメートルマン』やるでしょ(この秋公開予定!詳細はカルフのサイトにて!)、その中の鼻くその部分。
監督は、「鼻くそはおいといて」って言ったじゃないですか。そういうことを、『カンフーアクション』では、うんこのシーンはいいんじゃねーか、っていうのをやってるわけですよ(笑)。
別にカットしてもいいと思うんですよ。でも、あえてうんこたれてる人がいるわけですよ。そういうこだわり。
ま、僕はこだわってはないんですけど、鼻くそは(笑)。

そういうこだわりを通すのは、うーん、『作品を作っていくひと』かな、って。
一週間考えて鼻くそが面白いと思ったら、監督がつまんないといっても鼻くそやりましょう、って言った方がいいのか。 鼻くそ一個でもそういう真剣さ、勝負。
抜きがけの鼻くそ、みたいな。

例えばね、清潔とは何か、みたいな熱弁をまじめにふるっている男にクローズアップしたら鼻毛が出てるとか、 そうだったらむちゃくちゃ面白い。

大の大人がね、おおまじめにそういった一つ一つのことを討論しながら作品を作って行けたら、すごい幸せかな、って。

やがてね、この界隈で作品が認められ、全国で認められ、海外に行き、世界の裏側でね、うちらの「命がけの鼻くそ」について感想を持ち考え、「あの鼻くそいらないね」っていう話をされたら最高かな、って。
監督ともね、『5センチメートルマン』(くり返します。この秋公開予定!詳細はカルフのサイトにて!)まだ撮影もしてないけど、ファミレスとかで鼻くそがいる、いらないでつかみ合いの激論とかできたらいいよね。


(※)梅津直人さんはエルビスというお笑いグループを組んで活動中。

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