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梅津直人

映画においての「くすぐり」

テレビはねー、一応チェックするけど、あんまり興味ない。
面白くない。
もし面白かったらね、触覚が動く。こいつらすごい、って。
でも年齢のこともあるかもしれないけど、そこに動かなくなって。

逆に映画の面白い面白くないってのに触覚が動くようになっちゃって。
映画の中でのちっちゃいシーンとか。ちいさいこだわりみたいな所に目がいって、そういうところでこの監督はおもしろいのかおもしろくないのかみたいなことを判断する自分がいて。

例えばね、シーンでね、熱いコーヒーを持ってトイレに入った場合、トイレのトイレットペーパーの金具のふたの上にカップを置くでしょ。
で、いろいろ考え事をする。
で、ガラガラがラ…ってトイレットペーパーをとるでしょ。
そうすると、このコーヒーがカタカタカタ…って傾いて行くでしょ。
本人は気付かずにガラガラガラ…って。
だんだんだんだんコーヒーが傾いて行く。

で、熱っ!

とかそういうディティール。
そこで笑いは別にいらないんだけども、すごい重要な内容を話してる時も、そういう細かいディティールってのがすごい好きで。
映画においての「くすぐり」っていうのかな。
ライブにもね、順番ってのがあって、ライブの主催者が出る順番を決めるんですよ。
だいたい、一番最初はトップバッターは野球と一緒で、塁に出る。
で、二番はつないで、次はちょっとあっためて…

野球と違うのは、そこからだんだんおもしろくなっていく。

最後ほどおもしろい。
で、くすぐりって大事なんですよ。
だんだんお客さんがあったまっていくと、これ不思議なことに、笑う状態が出来て行く。
一番最初のお笑いって言うのはほんと難しくて。
ここのお笑いって言うのは、絶対後半のグループには負けちゃうんですよ。

これって映画でも何でもつながると思うんですけど、最初のパンチで、最初で取ろうと思っても絶対だめで、パンチかませてから徐々にくすぐりくすぐりであっためて行って、で、おっきい笑いをとる。

そういうのが醍醐味なのに、ちょっと違う要素のコメディアンが多い。
だからさっきのコーヒーじゃないけど、最初の方でそういうまじめなシーンにそういうのを入れとくと、笑いのシーンはないけども、お客さんは、じわじわやられてる。
おーおーコーヒーこぼれるよ、傾いてるよ、熱っ!っていうね。
このシーンはもう終わっていいんですよ。
笑いなんてとらなくてもいいんですよ。
それが最初のグループね。 次はちょっと面白いことやれば、もうお客さんは笑う体勢に入ってる。

そう言うことを考えるのが、今は興味あるかなあ。
と言っても昔っからね、僕の路線はそんなには変わんないですよ。
うちのコントやってる相棒が、笑いばっかりの路線をいきたい。
で僕は昔っからアイデアばっかりだして。
セリフがあっても、アドリブでどんどんノっていったり、とかそう言う方が好きだったねえ。

だから、監督(工房の主人)の映画でも、「梅さんそれはやめてください。」って言われるでしょ。
俺はそれをこれからもやり続ける人になりたいんですよ。
監督のダメをいくつ出すか。
そこで、きられたらしょうがない。でも、そこで勝負して行かないと。

いかにしてここを笑いに変えて行くかっていうのを考えるのがすごい好きなんで。
出た作品見て、「あ、この人滑稽だな」とか思ってもらいたいしね。


(※)梅津直人さんはエルビスというお笑いグループを組んで活動中。

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